Neutrino physics
ニュートリノは物質とほとんど反応しない不思議な粒子ですが、宇宙創成の謎を解く鍵を握っていると言われます。また、太陽での核融合、地球内部での核分裂などで必ず発生し、我々の体を常に通り抜けている"身近"な素粒子でもあります。このニュートリノに微かな質量があることが日本の実験で明らかになりました。同時に、3種類のニュートリノは飛行中にその姿を常に変え続ける "ニュートリノ振動(混合)"と呼ばれる現象を起こしていることもわかりました。当研究室では、海外および日本におけるニュートリノ振動実験を遂行し、「ニュートリノ質量の解明とレプトンセクターでのCP対称性の破れの発見」の研究に挑戦します。
Super-Kamiokande検出器
Hyper-Kamiokande検出器
スーパーカミオカンデ・ハイパーカミオカンデ
岐阜県飛騨市神岡鉱山内にあるスーパーカミオカンデ検出器は5万トンの超純水タンクを1万本以上の直径50cm光電子増倍管が見守っています。大統一理論で予言されている陽子崩壊を探索する装置であるとともに、大気ニュートリノ、太陽ニュートリノ、超新星ニュートリノを観測する巨大望遠鏡でもあります。久世研究室は2016年より参加しています。近い将来、純水にガドリニウムを混ぜてSK-Gdという新しい観測フェーズに入ることが予定されています。
Super-Kamiokandeホームページ
このスーパーカミオカンデの感度をさらに飛躍的に高めるために、ハイパーカミオカンデ実験が計画されています。これはSuper-Kのタンクの約10倍の容積を持ち、以下に示す加速器ニュートリノを用いてニュートリノのCP対称性の破れを確実に発見するのが大きな目標の一つです。久世研究室では新しい高感度の光センサー開発、測定器デザインの最適化のためのシミュレーション開発などに2012年より参加しています。
Hyper-Kamiokandeホームページ
J-PARC加速器施設
NuPRISM検出器
T2K実験
T2K(Tokai-to-Kamioka)実験は茨城県東海村にあるJ-PARC(大強度陽子加速器施設)で発生させた加速器ニュートリノビームを約300km離れたスーパーカミオカンデへ打ち込み、長距離でのニュートリノ振動を測定する実験です。μニュートリノから電子ニュートリノへの振動確率と反μニュートリノから反電子ニュートリノへの振動確率を比較することでCP対称性の破れがわかります。久世研究室は2017年に参加しました。J-PARC加速器の改造によりニュートリノビーム強度を増したT2K-II実験、さらにハイパーカミオカンデ時代のT2HK実験と将来実験が計画されています。発生直後のニュートリノビームはJ-PARC敷地内のND280前置検出器で精密測定されます。さらに1~2kmの地点に約50mの立坑を堀り小型の水チェレンコフ検出器を建設するNuPRISM計画も検討されています。
T2K実験ホームページ
Chooz原子力発電所
Double Chooz検出器
Double Chooz 実験
原子力発電所からは大量のニュートリノが発生しています。これを用いてニュートリノの研究をするのが原子炉ニュートリノ振動実験です。3種類のニュートリノの間には3通りの振動が有りえますが、そのうち2通りは振幅の大きな振動なので既に発見されています。ところが3番目の振動だけは何故かその振幅(=混合確率。θ13という振動角で表します)がとても小さく、未発見でした。この、"最後の振動"を発見するのが世界中のニュートリノ研究者の大目標でした。θ13がゼロだと、ニュートリノのCP対称性の破れも原理的に検出できないことがわかっているからです。Double Chooz実験はフランスのアルデンヌ地方(ベルギーとの国境近く)にあるChooz(ショー)原子力発電所を用いてθ13を精密測定する実験で、2009年に測定器建設、2010年に実験開始し、2012年に初めて近距離での原子炉ニュートリノ欠損の兆候を報告しました。現在は前置後置両検出器を用いてθ13の精密測定を続けています。日本からは東工大の他、東北大、首都大学東京、北里大、神戸大等が参加し、検出器建設からデータ解析まで大きな役割を果たしています。詳細 はDouble Chooz実験のページ、およびDouble Chooz 日本グループのページ へ。